• 3MIX(-MP法)

最近、新聞・TVなどで頻繁に『3MIX-MP法』という言葉をよく耳にします。

  • 『痛くない』
  • 『一回の治療ですむ』
  • 『神経を取らなくてもいい』
  • 『抜かないといけない歯まで抜かずにすむ』

等と紹介されていましたが、はたしてそんなにいい事ずくめの夢の治療法なのでしょうか?

3MIXという薬剤は、3種類の抗生物質を混合させた薬剤で、口腔内の細菌に対して有効であるとされ、10年ほど前から使用されていました。その3MIXの薬剤としての操作性、浸透性を高めたものが、3MIX-MPです。

『むし歯を削ってとらず、薬を塗るだけで一回の治療で治る』というふれこみですが、一切むし歯をとらないのに完全に無菌化できるのか疑問が残ります。また、感染して軟化・変性してしまった象牙質が全て硬くなる、というのは考えられません。

感染した歯質に薬剤を塗った上にレジン充填(白い樹脂の詰め物)をして治療終了とするようですが、その状態では完全に接着し封鎖することは無理です。封鎖しきれていないところでは、マイクロリーケージと呼ばれる再感染がおこってきます。薬剤の抗菌効果の持続期間は、もって数日ですので、一旦治ったように見えても再発する可能性は十分あります。

一旦薬剤を塗布して殺菌するにしても、その後改めて軟化した象牙質を完全に除去し修復処置を行う必要があると思われます。

以前からそのような治療は暫間的間接覆髄法(IPC)という名前で行われています。神経に到達する程大きなむし歯で、症状があまりない場合、神経を保存するために一回目の治療でむし歯を完全に取りきらず、一層残し、抗菌剤を塗布し仮詰めして3ヶ月〜1年経過観察した後、仮詰めをはずし完全にむし歯を取り除き修復処置を行う方法です。

この処置に使う薬剤には3MIXの他にタンニン・フッ化物合剤(HY剤)があります。HY剤は、3MIXと同様抗菌作用を持ち、高い浸透性、歯質の再石灰化を促進するといった特徴があり、抗生物質ではないので耐性菌の出現の心配もありませんので、現在では主にHY剤を使用しています。

-HY剤を使った抗菌療法の治療例-

術前のレントゲン写真です。一番右の奥歯に大きなむし歯があります。
赤い線がむし歯で、黄色の線が神経です。むし歯が歯の中の神経に非常に近づいているのが見えます。
薬剤を塗る直前の写真です。中に見える茶色い部分がとりきらずに残してある虫歯です。この上にHY剤を塗布し、仮詰めします。
歯の周りにゴムのシート(ラバーダム)を被せ、だ液が入らないようにしています。無菌化には不可欠です。
仮詰めした状態です。咬みあわせを調整して、この状態で3ヶ月〜1年程経過観察します。

 

今回のように、新聞やTVなどで『最新の治療』と紹介されると、世間一般の人達はあたかもそれが良い、正しい治療法であると錯覚してしまいます。もちろんある面においては有効ではあるでしょうが、全ての処置に有効ではありません。『抜かないといけない歯まで抜かずにすむ』なんていうのは誇張して伝えられているだけかもしれませんが、まずありえません。

数年前にも同じように、『歯周病がうがい薬で治る』といったような報道がされ、話題を呼びましたが、そういった報道がされるのは、誰しもがむし歯、歯周病に限らず病気が簡単に治せればいいのに、という願望があるからだろうと思いますが・・・

歯科の医療技術や使われる材料は、日々進歩しており、これから先もさまざまな治療法が次々と紹介されるでしょう。大事なのは、信頼できるかかりつけ医を持ち、正しい知識・情報を専門医から直接得ることではないでしょうか